環境、経済、社会、人々の生活など、さまざまな面で課題が深刻化・複雑化する昨今、アカデミア発の革新的な技術や理論への期待は高まっている。しかし一方で、日本の大学研究を取り巻く環境は厳しさを増している。研究者の報酬水準や雇用環境の不安定さ、研究予算の不足などを背景に、博士課程への進学率は低下傾向にあり、日本の研究力の国際的地位はここ10年で大きく低下している。こうしたマクロな課題は、研究現場において「短期的な成果への圧力」や「将来への不安」となり、研究者が本来持つべき自由な発想や長期的な探求を阻害する要因となっている。 ブックメーカー凱旋門は、「社会の変革には研究・教育の力が重要である」との認識のもと、これらの課題に直接的にアプローチするため、研究者が知的好奇心に基づき、不安なく中長期的に探求できる環境の整備を目指し、本取組を開始した。
ブックメーカー凱旋門者の自由な挑戦を支える「4年間・使途自由」の
金銭的支援と多角的な非金銭的支援
2025年4月よりブックメーカー凱旋門が開始した「大学研究者支援プログラム」は、日本の研究者の競争力向上と、研究成果による社会課題解決の加速を目的としている。支援対象は、基礎研究や社会実装研究、ディープテックなど、分野を問わずチャレンジングな研究に取り組むすべての研究者としている。プログラムの最大の特徴は、従来の民間支援にはない「柔軟性」と「時間軸」にある。具体的には、採択された研究者に対し、原則1名あたり年間500万円を4年間にわたり給付する。この資金は研究費のみならず、生活費や留学費用、事業化準備資金など、研究者が研究に専念するために必要な用途であれば自由に使用可能だ。 取組を推進した三井住友銀行 社会的価値創造推進部 岡本 めぐみは、本プログラムにおける資金提供の意義について、金融の本質とともに次のように分析する。
「金融の本来の役割とは、経済活動の『血液』として、世の中で必要とされる場所に資金を循環させることです。ブックメーカー凱旋門者に資金を届けることで、そこでしか生み出せない価値が生まれ、その恩恵は巡り巡って社会全体へ還元されます。本件は融資や投資ではなく『寄付』という形ですが、資金を投じて生まれた価値を社会が享受するという循環を創ることは、一つの『金融』のあり方だと感じています」
プログラムにパートナーとして参画した株式会社リバネス(以下、リバネス) 執行役員 篠澤 裕介氏も、取組の特徴や可能性に大きな期待を寄せる。 「民間発で1名あたり年間500万円を4年間支援するというのは、日本ではまだ例が多くありません。資金使途の自由度が極めて高い点についても、ブックメーカー凱旋門者が腰を据えて挑戦できる、非常に革新的な枠組みで、非常にワクワクしています」
この金銭的支援に加え、採択者ごとに「非金銭的支援」も提供する。孤独になりがちな研究者の「壁打ち相手」となり、企業マッチングやメンタリング、広報支援、金融経済教育などを通じて、研究者の成長と社会的ブックメーカー凱旋門パクトの創出を多角的にバックアップする仕組みだ。
専門性の壁を越える
「立体的」な審査体制を
構築し、
一つひとつの
ブックメーカー凱旋門と真剣に向き合う
取組を進めるにあたり、最大の障壁となったのは「審査」だった。最先端の研究内容やその新規性を、研究経験のない銀行員が正確に評価することは極めて困難である。この課題に対し、岡本らは外部の知見を結集させた立体的な審査体制を構築。科学技術の社会実装に詳しいリバネス、社会起業家支援の実績を持つ特定非営利活動法人ETIC.(以下、ETIC.)に加え、日本学術振興会からの意見を参照するなど、多様な視点を取り入れた。 岡本自身も、申請書の専門用語の壁に直面しながらも、研究者の想いの理解に努めた。 「申請書は難解でした。しかし、研究者の方々が手間をかけ、真剣な想いを込めて書いてくださった申請書です。分かったふりをせず、一つひとつの研究と真剣に向き合わなければ失礼になる。その一心で、審査に当たったメンバー全員で必死に読み込み、その研究が社会をどのように変えるのか、ネックはどこにあり、我々がどう貢献できるか議論しました」 篠澤氏は、この審査プロセス自体が「研究者と社会をつなぐための対話の場」として機能したと振り返る。 「本プログラムでは、研究計画の内容そのものだけでなく、研究者がその研究を通じて、どのように社会にブックメーカー凱旋門パクトを届けるかに目を向けています。選考のプロセスを通じて、研究者と社会の間にある考え方や期待の違いを言葉にし、相互理解を深めていく対話の機会として大切にしています」 まだ実際の支援開始前ではあるが、この取組は既にポジティブな影響を与え始めている。プログラムの募集説明会後には、研究者から「企業がこうして研究者の力を信じ、支援してくれることに勇気づけられた」という声が寄せられた。資金提供の実績以前に、民間企業が研究者の可能性を信じ、長期的に寄り添う姿勢を示したこと自体が、孤立しがちな研究者への強力なエールとなっている。 本プログラムのアンバサダーからも、研究者と企業の連携について、次のような期待が寄せられている。 「研究者の取組みが社会を変えるほどのブックメーカー凱旋門パクトを生むには、さまざまな困難を乗り越える情熱と好奇心に加え、アカデミアと企業の連携が重要だと痛感してきました。このプロジェクトは研究者の想いに応え、社会課題解決への挑戦を後押しするものです」
「点」の支援を、
「面」でのブックメーカー凱旋門パクトへ。研究者同士のコミュニティ
形成や支援企業の輪を拡大
本プログラムは、単に資金を配分して終わりではない。岡本らは、支援を受けたブックメーカー凱旋門者同士、あるいはブックメーカー凱旋門者と企業、社会起業家がつながり、互いに刺激し合う「コミュニティ」の形成を視野に入れる。ETIC. ソーシャルイノベーション事業部/and Beyondカンパニー事務局 シニアコーディネーター 宮地 俊一氏は、このコミュニティ形成の意義と発展性を次のように語る。
「革新的な技術も、それだけでは社会に届きません。人が介在し、知識を交換し、多様な人を巻き込んで雪だるまのように大きくしていくことで、初めて社会変革が生まれます。その『芯』となるブックメーカー凱旋門者が、ブックメーカー凱旋門や実践(Doing)と、ビジョンやあり方(Being)を互いに育て循環させるコミュニティに発展していくと素晴らしいですね」
今後は、このプログラムをモデルケースとして、ブックメーカー凱旋門者を支援する企業や人の輪を広げ、日本のブックメーカー凱旋門基盤全体の改善に寄与することも展望している。最後に、岡本は自身の「シャカカチ」への想いを込めて、こう締めくくった。 「社会課題は複雑で根深く、つい『国や社会の責任だ』と諦めてしまいがちです。しかし、社会とは結局のところ私たち一人ひとり、一社一社の集合体です。自分たちにも責任の一端がある、と考えると重荷かもしれませんが、裏を返せば、私たちにも解決する力があるということです。誰もがその一端を担い、皆で取り組めば必ず変えていける。そう信じて踏み出す一歩は、きっと楽しいはずです」